「ヘレン・ケラー」と「ナイチンゲール」
テーブルに娘(小2)の夏休みの読書記録カードが置いてあった。
書いてあった本のタイトルが「ヘレン・ケラー」と「ナイチンゲール」。
これを見て私は思わずニヤリとしてしまった。
「・・・ついにこの子も偉人伝を読む頃になったか・・・」と。
私の通っていた小学校は3年生になると、図書室で本を借りてもいいことになっていた。
それまでの学級文庫とちがい図書室にはそれこそ山のように本がある。
運動が苦手で、外で元気に遊ぶより部屋で本を読むほうが好きな子供だった私にとって、図書貸し出し解禁は大きな事件だった。
初めての貸出日、わくわくしながら放課後図書室へ行くと、果たしてそこには小3の私には想像以上の多くの本があった。
多すぎて一体どれを借りたらいいのかわからない。
適当に選んで借りてみた第1号は「消えた国旗」とかいうタイトルで日韓併合や在日朝鮮人の話だった。
うーん、小3の私には難しすぎた。
漢字も読めないものが多く「奥さま」というところを、こころのなかで「歯さま」と読んでいた。
結局最後まで読んだかどうかも今となっては定かではない。
次の貸出日にはその本を返しながら途方にくれた。
「本は借りたい、読みたい。でもどれが面白いのか?どれを借りたらいいのか?」
そんなとき友達のうちでやはり図書室から借りたという本を見た。
「ナイチンゲール」。
白衣の天使フローレンス・ナイチンゲールの伝記だった。
「これだ!今度はこれ借りよう!」
ご存知のとおり、この子供向け偉人伝記シリーズはどの図書室にもどーんと置いてある。
これからはこのシリーズを借りればいいのでもう迷う必要はない。
嬉々として向かった図書室、だが「ナイチンゲール」は借りられているから当然なく、
「ヘレン・ケラー」「キュリー夫人」といっためぼしい女性偉人伝も見当たらない。女の子っぽい子供だった私だからやっぱり女の人の話が読みたかったのに・・・
仕方がないので何の脈絡もないのだが「シュバイツァー」を借りてきた。あくまで「ナイチンゲール」を借りるまでのつなぎのつもりだったので、一応最後まで読んだがほとんど内容は覚えていないが。続いて、「ノーベル」、これもほとんど仕方なく借りた感じで、3回目にようやく女性伝の「キュリー夫人」を借りることができた。
最初のお目当てだった「ナイチンゲール」はかなりたってか読んだような気がするが、やはり印象は薄い。覚えているのは家がお金持ちだったとか、町の名前(多分フィレンツェ)をつけられたとかぐらい。
感動や知識を得る為に本を読むのではなく、ただただ「本を読む」こと自体が目的だった時代の話だ。今になってみると「子供だったんだなあ」とかえって微笑ましくすらあるが。
最後にわが娘の読書記録の話に戻るが、2冊目の「ナイチンゲール」からとんと進んでいないようだ。
彼女の伝記ブームはもう過ぎ去ってしまったのか?
いずれにせよ子供と暮らすのは、もう一度人生を生きるようで楽しいものだ。