« 魔除けと悪あがきと | トップページ | 二人の后 »

2006/02/03

プロエッセイスト

 先日、プロのライターの方の文章を見る機会があった。
 フリーで活躍されているその方は、
 ライター志望の人へのアドバイスをする機会が多いとか。
 そういった人からよく質問されることは、
 「文章を書くのが好きなのですがそれでライターになれますか?」
 という素朴な疑問なのだそうである。

 それに対する答え、
 それは
 「文章を書くのが好きなだけではプロのライターになるのは難しい」
 ということ。
 なぜならば
 「ライターにとって文章を書くというのは仕事のほんの一部にしか過ぎない」
 からだそうだ。
 魅力的な文章を書く力よりもむしろ、
 取材の段取りの仕方や面白い話を聞きだす方法など、
 芸術性より実質的な能力を要求されることのほうがより多い、
 そんなことをそのライター氏は強調されていた。
 付け加えて仰ることには、
 「文章を書くのに自信があって、
 とにかく自分の好きに書きたいという思いの強い人には
 ライターになるのはあまりお勧めできない。
 そういうひとは趣味でエッセイのサイトを運営するほうが
 多分合っているような気がする」
 とのことである。

 それを読んだ私の感想は、
 (ううむ、つまりライターというのは
 いわゆるエッセイストとは全然違うということなんだ?)
 というものだった。
 エッセイを自由に書いて本にしたい。
 即ちプロのエッセイストへの足がかりとして
 それでライターを目指すというのはどうやらお門違いということらしい。

 エッセイ、つまり随筆ということになるのだろうか。
 つれづれなるままにこころの内を描く、
 そんな文章のことだと私は考えている。
 blog花盛りの昨今、
 ちょっと文章を書くのが好きなような人たちはプロではないとはいえ
 皆エッセイストのようなものなのだろう。

 ここで私はひとつの疑問にぶち当たった。
 (・・・うん?
 そもそもプロのエッセイストってどんなものなのだろう?
 果たしてそういうひとって本当にいるの?)

 もちろん雑誌などにエッセイを掲載している文筆家の中には
 その肩書きを「エッセイスト」としている人も多い。
 そのエッセイを書くことによって収入を得ているのだろうから
 当然プロなわけだ。

 でもそのプロエッセイストたちの活躍の場をじっと見つめていると
 それは、ある人たちはマスコミにおけるタレントのようであったり、
 もしくは何か得意分野での豊富な知識を文章化(エッセイ化)する
 記者や学者といったジャーナリスト的な人であったりすることがわかってくる。

 純粋にただ自分のつれづれなる想いを綴ったエッセイ、
 それだけを発表して日々の糧を得ている人というのは案外少ないのでは?
 そして、
 そんな数少ない人の肩書きはきっとエッセイストではなく、
 「作家」となっているのではなかろうか。

 エッセイスト、随筆家、作家、
 結局それらの違いは単なる呼び名の違いなのかもしれないのだが。
 そのどれを選んで自分の肩書きにするのかは、
 その人の個性なのだろう。


 そんなことをつらつらと思い廻らすうちに強引にも
 「プロのエッセイストはいない
 あるのはプロが書いたエッセイだけだ」
 という結論を導き出した私である。
 しかし、
 そう思うと真におこがましいのだが
 なんだか我々素人の書いたエッセイも
 プロの書いたエッセイとさほどの遜色がないように
 思えてくるから不思議だ。
 実際
 「これは今までどの雑誌で読んだ活字エッセイよりも
 上手くて面白い!」
 と感じる素人のエッセイサイトを私もいくつか知っているし、
 そもそも対価を得るために書くというプロの行為には、
 思いのままに心に浮かんだことを書くという随筆―エッセイ―とは
 何某かの矛盾があるような気にもなってくる。

 多分
 エッセイとは、随筆とは、
 仕事という生業の産物ではなく、
 趣味や嗜好の産物として産み出る方が
 ふさわしいものなのなのかもしれないな・・・
 プロの文筆家にしてもきっと
 そう書くことの方が心地よく書けるわけで、
 それがプロアマ問わずの今日のblogブームの原因なのではなかろうか。


 さて、今や空前ブームとなっているblog。
 このブームの奥底には

 かつてはプロの文筆家にしか許されていなかった
 自分の内面を文章化し
 かつ、それを広く公表することが可能になったこと
 そして金銭対価とは無縁であるがゆえに
 より自由に表現ができるということ

 その驚きと喜びが溢れている。

 その喜びに
 日々多くの人たちが
 自らの想いを、考えを、感情を、吐露し続ける。


 その喜びに逆らいきれず
 私も、今日もblogの更新に手を出してしまいました。

 ちょっとした中毒状態のようですね(苦笑)


|

« 魔除けと悪あがきと | トップページ | 二人の后 »

コメント

Bachさん、こんにちは。
きっとプロにはプロの、アマチュアにはアマチュアの喜びも苦しみもあるのですよね。その両方を体験されたBachさんが羨ましいです。
いつもながらの丁寧なコメント、どうもありがとうございました。こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: ぞふぃ | 2006/02/04 12:48

同感!
折に触れ、肩肘はらずに綴られるぞふぃさんの文章にいつもながら引き込まれて今日もついつい最後まで読んでしまった!してやられた!
私は演奏家を志したことがありました。短い間でしたが実際に肩書き「プロ」で活動しました。
その折、友人が「卑近なプロになるより、高尚なアマでいませんか?」と言った言葉に真実みを感じ、自分も好きな楽曲を好きなように演奏することの心地よさを感じたものです。
きっと、アマに徹している人の中にはそのような方々が多くいらっしゃるように思います。
人のご機嫌を窺いながら文章を書くより、真実が語られるように思います。これからも立ち寄らせて下さい。有り難うございました。

投稿: Bach | 2006/02/03 22:45

この記事へのコメントは終了しました。

« 魔除けと悪あがきと | トップページ | 二人の后 »