おカイコさん
うちに、おカイコさんがやってきた。
その数4匹。
小3の息子が学校から持ち帰って来たのである。
さあ、それからが大変。
まず虫カゴを押入れから探し出し、
エサとなるべき桑の葉の確保に大わらわ。
なにせうちには、
桑の木がどんなものかを知っている者は誰もいない。
幸いにもインターネットで
桑という植物が「こんなもの」だということを調べ上げることが出来、
(ありがとう、ネットさん!)
近所を散策した結果、近くの公園にたくさん茂っているのを発見。
というわけで、ここから葉を調達すること早一週間、
おカイコさんはどうにか4匹とも我が家にて無事生息中である。
さて、そのおカイコさん、
いやぁ、どんどん大きくなるのだ。
体長も太さも来たころの1.5倍には成長しただろうか。
それもそのはず、
彼らは生活の全てをひたすら桑の葉を食べることに費やしているのだ。
食べる、食べる、食べつくす・・・
虫カゴに耳を近づけると
ムシャムシャと葉をかじる音すら聞こえてくるぐらい。
これなら大きくなるのも道理である。
そのたくましい姿を目にしながら
遠く思いを馳せるのは、
その昔日本の富国強兵を支えていた繊維産業のこと。
カイコを「おカイコ様」と呼び大事に育てていた多くの養蚕農家。
繭から生糸をつむぎだす製糸工場で働いていた女工さんたち。
その生糸で繊維をつくり安値で売りまくり外貨を稼ぐ。
近代化を進める当時の常套手段である。
時は流れて、
日本では既にそういう軽工業は主流ではなくなった。
私が子供のころは、
石油化学などを中心にした重化学工業がメインの位置についていた。
(そういえば、四大工業地帯なんて覚えたっけ。
今の子供は社会の授業で一体どんなこと教えられているのかしら?)
産業の主役は時とともに次々と変わっていく。
日本の近代化を支えたおカイコさんも
今や子供の理科(あとほんのちょっとは社会も?)の教材だ。
で、
こんな栄枯盛衰に
私がしみじみしている間も
おカイコさんたちは桑の葉を食べ続ける。
そんな
私のノスタルジーも知らずに
ただただ
ひたすらに食べ続ける。