のっぽの花
女の子の世界には、
突然意味も無く流行るものがある。
そのとき私の周囲で流行ったのは
教室の教壇に花を持ってきて飾る、
というものだった。
朝、
誰と決まっているわけでもないのだが
気の利いたような子が
教室の花瓶に持ってきた花を生ける。
朝の会になると、
それに気付いた先生が
「あら、素敵な花ね、誰だ持ってきてくれたの?」などと尋ね、
「○○ちゃんです」と知っている子たちが答える。
「そう、ありがとう。とっても綺麗よ。」
「そう、ありがとう。とっても綺麗よ。」
そう自分にも言ってもらいたかったのか、
それとも
自分もそんな気の利いたことができる子だと
皆に思われたかったのか、
とにかく
(花を持っていきたい)
そう無性に私は思ったのだった。
私が持っていったのは
自宅の庭に咲いていた名も知らぬの背高のっぽの花。
それを新聞紙に包んで持って行き花瓶に挿す。
しかし、
そうやって挿された花は
自分の席から眺めてみると
なんとも地味で情けない風であった。
もちろん先生は
そんな私の花束にも何らかの反応を示した。、
それが誠意のこもった温かいものであったのは間違いない。
しかし、そのとき既に私は知っていた。
それまで教室に飾られていた数々の花は、
お花屋さんで買われたものか
もしくは丹精に育てられた庭の花であったこと、を。
それらは
私が持ってきたような
雑草のごとく茂っていたものではなかったこと、を。
今日の昼休み、
郵便局に所用があって出掛けたとき、
その花が、
取り壊された家の跡に生い茂っているのを見かけた。
クレオメ、別名フウチョウソウ(風蝶草)。
あの花が
そのような名前であったことを、
今日初めて知った。
あれは
小学校の3年生だったか、
もう30年以上昔の話、だ・・・