誰にでもできる仕事
それは、
新幹線に乗ろうとしたときの思い出から始まった、
ある財界人の文章だった。
彼が目にしたのは
素早い手つきで車内を整える中年女性清掃員。
決まりきった手順で機械のように正確にてきぱきと仕事をこなしていくその姿に
彼は少し前に世にもてはやされたある「考え」を思い起こす。
それは、
「これからの生き残っていく仕事というのは
専門の能力を活かした『自分にしか出来ないもの』に限定され
徐々に誰にでも出来る単純作業というものは消滅か無価値化していくであろう」
という世の中の展開を予測した「考え方」。
しかし彼は、
鮮やかに作業する女性清掃員の姿を目の当たりにして、
「彼女の仕事ようなものが
消滅もしくは無価値化される世の中になること」に
少なからぬ抵抗感を感じるのだった。
だって、
世の中の人間皆が皆、
ものすごいクリエイティブなビジネスを立ち上げられるわけでもないのだし、
スポーツや芸術の世界で目覚しい働きをするわけでもないのだから・・・
新幹線の室内を決められた時間できちんと清掃する―
確かにそんな仕事は誰にでもできる仕事で、
代わりはいくらでもいるようなものではある。
が、
だからといって
このような仕事が消滅したり無価値化する世の中は、
決して好ましいものではないだろう。
・・・
この文章を読んだ私も
この意見に深く頷いていた。
今現在、
仕事の価値というものは
代わりが利くか利かないかという点で定められていることが多い。
実際、
仕事に対する報酬というものは、
その観点で定められているのがほとんどだ。
しかし、
本当に意味での仕事の価値というものは
そういうものだけではないだろう。
古臭くて気恥ずかしい言い方になってしまうけど、
「世の役に立つ」
っていうことこそ
その仕事の真の価値なのである。
給料の高さや技能の高さなんてもの以外にも
人の仕事には
こんな当たり前の尺度があったなんて
なんだか
目からウロコが落ちるような感じがした。
実際、
誰にでも出来る仕事、
つまらない単調な仕事
きつい割には報酬も少ない仕事
だが、
そんな取るに足らない仕事でも
それをクサらず淡々とこなす姿は、
お世辞抜きに本当に美しいものだから・・・
つまり
「ジャガイモの皮むきも
完璧にこなせば神の栄光を現すこととなる」
(映画「炎のランナー」より)
ということなのだろう。
・・・そんなふうに、
皆さんも思いませんか?
目の前の仕事をただただひたすらに淡々とやっていく
そんな人に、私もなりたい・・・
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