私の愛すべき「最後の将軍」
司馬遼太郎の「最後の将軍」を読了。
300ページ足らずのさほど長くない小説。
会話や慶喜の私生活もほとんど出て来なく、
幕末のしかも幕府内の政情に焦点を絞ったその作風は
硬派で堅苦しく、
女性の目から見ると華やかな面白みに欠けるものなのかもしれません。
でも、
ドタバタとした幕末の政情が思いのほかスッキリ描かれていて、
「意外に分かりやすく楽しかった」
というのが私の大雑把な感想だったのでした。
天邪鬼な私としては
「この本を手にとったのは
今年の大河ドラマが『篤姫』だからってワケではない」
と言いたいところなのですが……
やはりそのせいであることは否めない……
どうも天璋院が主役だと
15代将軍慶喜は敵役って感じになってしまうのが
納得いかなくて。
本当に不思議なことなのですが、
歴史上の人物に対する好き嫌いの印象というものは
最初に抱いたものをなかなか捨てられないもの。
最初に好印象を持った人
―例えば私の場合明智光秀とか石田三成とか大村益次郎とか―が、
敵役として描かれている物語は
どうしても不平不満を抱いてしまうのです。
その点
この「最後の将軍」に描かれる
徳川慶喜像はさすがに主人公ですから。
しかも
ただ単純に主人公として美化して描かれているというよりは
むしろ
彼の「不気味で得体の知れない」その性格が強調されていて
彼のファンでもある私を十分満足させるものでした。
確かに
10年前の大河ドラマ「徳川慶喜」は
分かりにくい、盛り上がりに欠けるという声が多く
失敗作品だったのかもしれないけど、
原作はなかなかよい……
こうしてみると
ドラマはやっぱり脚本家の力量にかかっているのかもしれませんね。
確かにドラマ化は難しい原作だったとは思いますが、
作り様によっては
もう少し面白いドラマになりそうだっただけに
かえすがえす残念、です。
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