笑顔にまつわる2つの教え
「いつもニコニコ笑顔でいるように心がけなさい」
そのお母さんは自分の娘さんに常々そのように言っていたそうです。
人間だったら誰しも、調子のいいときもあれば悪いときもある。
調子の悪いときこそそれをこらえてでも
笑顔をつくること
それは
周囲にも自分自身にも
知らず知らずによい影響を与え
ひいてはその逆境をも乗り越えるきっかけにもつながる。
だからこそ
つらいときでも
笑顔を常に忘れないように……
どこで読んだ文章なのか
どんな方がその娘さんだったかはすっかり忘れたのですが。
実際
この「つらいときも常に笑顔を」的な教えは
広く世に言われていることです。
親だけではなく人生の師、尊敬する偉人たちも
そのような言葉を残す人は多い。
それだけにこの言葉の中には真理があるのでしょうね。
「辛くとも雄雄しく笑顔を忘れずにがんばること」
そんなひとに
私自身も憧れを感じますし
そんなことが出来たらどんなにいいことかとも思います。
しかし
私の母は
私にはこれとは違った教えをさずけておりました。
それは、
うれしいとき幸せなときはそんなにおおっぴらにニコニコするな
というもの。
理由は
「人間いいときも悪いときもあるものだから
いつもいつも幸せでニコニコなんてしていられない。
『いいときはえらい調子がいいけど、悪いときは不機嫌で身勝手な気分屋だ』
なんて思われないように……」
ということでした。
自分の身の丈を知り
自分の力以上のことを自分にも課さず
周りにも期待させないようにあらかじめ予防線を引く、
母はそういうひとだったんですよね。
やるべきことはきちんとやるが、
それ以上はやらない。
おせっかいではないが親切でもない。
手堅いが冷たいひと……
そんな彼女だから
「いつも笑顔でいるように」なんて
高いハードルを私には用意しなかったのでしょう。
彼女自身がそうやって生きてきたように
私にもそうやって生きることを薦めたんだと思います。
…
人間的には
前述のお母さんのもののほうが
はるかにすばらしい教えであります。
私が受けた母の教えは
それに比べるとあまりに身勝手で姑息なもの思われる……
それでも
何故だか私は母の教えのほうがありがたく感じられるのです。
綺麗ごとではなく
理想論でもない
ただの処世の術にしか過ぎない教えですが、
そこに
親にしかない身勝手なほどの愛を感じるからでしょうか?
(実際学校の先生はこんなことを教えたりしないでしょう)
そして
必要以上にいい格好をしようとはしない
現実的な彼女を
私が愛するがゆえ
なのも大きな一因なのでしょうが。
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