伝わる憎悪
それは、
この前の旅行中のこと
駅にあったお菓子の自動販売機での出来事でした。
コインの投入口のそばに書かれている
その国の言葉で書かれた「買い方」を読んで
どきどきしながら
注意深くお金をいれ
チョコレートバーのボタンを押し
おつりが戻るレバーを私は回したのです。
おつりは戻ってきました。
しかし、肝心のチョコレートバーは取り出し口に落ちてきません。
「しまった、やり方が間違ったか?」と
もう一度「買い方」を確認するのですが、別に何の問題点も見当たりません。
…いや?まてよ…
と、良く見てみると
ああ、どうやら落ちてくるはずのチョコバーが金具に引っかかっていたのでした。
あーあ、こういうこと……
自動販売機には付き物の事故みたいなもんですね。
しかし、
そのときは
そのままあきらめるのも癪に思えたんでしょう。
よせばいいのに
近くの売店があったので
ダメモトでのそこの女性に片言の英語と身振りで尋ねてみたのです。
そのときの
その販売員の彼女のにがにがしげな顔といったら……
(訳わかんない、頭おかしいんじゃないの?!
言葉もロクに話せないくせにごちゃごちゃ言うんじゃないわよ!)
とまあそんな感じ。
もちろん本当は何と言っていたかどうかはわかりません。
でも不思議なことに
言葉がわからなくてもそういう憎悪の念は
確かにこちらに通じるものなのですよね。
結局
自動販売機のことを私が言っていることは
彼女は理解したようですが、
「あの販売機はうちとは関係ないのよ!」というような
ゼスチャをしてプイとよそを向いて全てが終わりました。
ああ
こういうのを何っていうのでしょうか?
頭から冷水をぶっかけられたような、そういう気分。
誰が悪いとか
そういう問題なのではないんでしょうが、
外国人として旅をしたり
外国人として生活するということは
そういう悪意の目にいやがおうにもむきだしにさらされるものなのだと、
今更のように知ったわけなのです。
外国で暮らすって
ホント大変なコトなんだ……って。
この件を差別とかなんだという問題を結びつけるのは
ものすごく強引だし、
短絡的で情けないとは思う……
そう思うのですが、
やっぱり私が彼女と同じ風貌だったら事態は違っていたのかな
なんてつい思ってしまう。
そういう卑屈さを自分の中に認めてしまうというか
そんなことも含めて
なんだか
とても悲しく侘しく心に残る一件、だったのでしょう。
このあとの旅の残り、
現地の人(レストランのウェイター、マックのバイト君、アイス屋の売り子さんなどなど)
の微かな表情の変化にも
妙に敏感になってしまう私がいました。
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