仲良しごっこ
「今の自分にとって大切なものを3つ挙げるとしたら
一体なんになるでしょうか?」
そういう質問をされたことがあった。
とあるセミナーでのことだ。
回答する側のトップバッターは私。
やや緊張気味にゆっくり考えながらこう答える。
「やっぱり家族ですかね、それから自分の健康……」
家族、健康と、それからあとひとつは……
ああ、
残念ながらそのときの私にはもう一つの大切なものがなかなかみつからない。
しょうがないのでなんとなくお茶を濁して私は席つく。
内心冷や汗をかきながら……
続いて答える二番手の人は、私より大分若い女性。
彼女は屈託なく真っ先に答える。
「まずは友達、それから自分の趣味と、あと今○○にハマッているからそれに関する□□かな。」
ああ、友達か!
そうだった、
とここで気がつく私。
そうだったよ、「友達」がいたじゃないか。
(結局彼女に続いて語るそのクラスの全員が、
「今の自分にとって大切なもの」として「友達」を挙げていた。)
その「友達」を忘れていたなんて私は全くうっかりしていた。
……
それでも、
ほんとうに私はうっかりしていただけなのだろうか?
友達、という存在が
そのときの私の生活においては大分影の薄い存在になっていたのは
残念ながら否定しきれない事実だった。
そして今も多分……
いつのころからだろうか、
友達の存在を常に気にしなくなったのは。
友達、友情はすばらしいものである。
それは確かなことだ。
ただ
それはそれ自体を目的として大切にするようなものというよりは
何かに向かって突き進んでいく自分に対し
後からついてくる「オプション」というか「おまけ」のような気がする。
言い換えれば
人生をより豊かにしてくれる最高のご褒美とでもいうか。
だからなのだろうか
「友情や仲間を何よりも大切にしている」と豪語する人たちを
私はなんとなく信用できないようになっている。
仲良しごっこ
彼らを前にすると
そんな意地悪な言葉が、
いつも頭の中をよきっている。
| 固定リンク
« 伝わる憎悪 | トップページ | 女性作品の生々しさ »